皆さんも、宮澤賢治のこの有名な詩をご存じのことと思います。この詩は、賢治の死後発見された手帳に書かれていたもので、賢治が病気で倒れ、その療養中、亡くなる二年ほど前に書かれたものだと言われています。
中学一年の時、国語の授業で、初めてこの詩に出会ったわたしは、正直とまどいました。「東ニ病気ノコドモアレバ・・・・・・西ニツカレタ母アレバ・・・・・・」のあたりはわかるとしても、何故「ミンナニデクノボートヨバレ」たいのか、何故「ホメラレモセズ」と望まなければならないのか、まったく理解できなかったのです。
しかし今、大人になって、再び読み返してみると、この詩には、どこかキリストの生き方に通じるものがあるような気がしてなりません。もちろん、賢治はキリスト教徒ではなく、仏教(法華経)徒だったのですが、清貧をよしとし、自分より他者を大切に生きるという考え方は、多分にキリストの教えに重なるところがあるように思います。とはいえ、実際にこのように生きることは、決して簡単なことではありません。賢治の弟である宮澤清六も、この詩は賢治の「祈り」であると語ったそうです。