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巻頭言

 今年は、12月1日から主の降誕を待ち望むAdvent(待降節)が始まります。イエスの誕生に先立ち、天使のお告げによって知らされたことを聖書は語っています。福音記者マタイは、このできごとをおとめマリアの婚約者の聖ヨセフの視点から語ります。結婚前のヨセフとマリアはまだ一緒には暮らしていませんでした。マリアは天使のお告げを受けたあと、聖霊のわざによって身ごもります。このことを知ったヨセフはうろたえます。「夫ヨセフは正しい人であったので、マリアのことを表ざたにするのを望まず、ひそかに縁を切ろうと決心した。」(マタイ1・19) 

 ヨセフはマリアを訴えることはせずに、深い悲しみのうちにマリアと別れようと決断します。これは、神が一人息子イサクを求めた時のアブラハムの犠牲に似ています。自分の最も大事なものをあきらめるという試練です。しかし、アブラハムの場合と同じく、主はヨセフに働きかけ、ヨセフの信仰を見い出します。ヨセフの夢枕に立った天使が、「ダビデの子ヨセフ、恐れず妻マリアを迎え入れなさい。マリアの胎の子は聖霊によって宿ったのである。」(マタイ1・20)と知らせます。この福音は、神がヨセフにヨセフの考えていた計画とは別の計画、神の偉大なる使命をヨセフに与えたことを示しています。

 彼は、心の奥深くで天使から語られるメッセージに耳を傾けることができる善良な人でした。これに対し、私たちの心はどれほど憎しみと嫌悪と恨みを抱き、それに翻弄されることでしょうか。ヨセフは模範を示しています。主の計画を受け入れたヨセフは、信仰に生きる私たちに問いかけるとともに、愛につながる道を示してくれています。マリアは、恵みに満たされ、神の言葉に完全に身を委ねることができる信仰深い女性でした。マリアとヨセフの姿を仰ぎ見ながら、主の降誕を祝う準備を致しましょう。